「アメリカ人の精神と心を知ろうとするならベースボールと、そのルール、現実を学ぶのが
よい」とはあるフランス人批評家のことば。
本書は「ベースボール」のルーツをめぐる諸説を検討するにはじまり、ベーブ・ルースなる
「稀有な男が現れるまでのベースボールの、つまり資本主義とアメリカの夢の軌跡」について
論じる。
このゲームの起源をめぐる「ダブルデー=クーパーズタウン神話」なるものは、アメリカの
形成過程の歴史と不可分の結びつきを以って語られる。
ルールの発展においてますます強調されるようになった「男らしさ」は、アメリカの白人
男性の理想を象徴的に表現している。
…といった具合に、ベースボールなるスポーツの歴史に社会学的なライトを当てることで、
アメリカンマインドの深層に切り込んでいくのがこの本の目的。
単純にメジャーリーグ関連のトリビアを求めているのであれば、本書はさほどその要求を
満たすものではない。
秀逸であったのは最終章、古き良きスモールタウンなどという馬鹿げた幻想――つまりは、
世界中に遍く「昔は良かったね」というありもしない妄想――と大都市型の消費社会の亀裂を
神話的に埋め合わせるものとしてベースボールを読み解く分析は実に興味深いもの。