著者本人ですが、あえてここに書かせていただきます。
これまでのBI本とはちがって、BIの紹介や「こうなったらいいな」あるいは「こうなるだろうな」的なBI導入後のバラ色の社会像の提示は本書にはありません。BI入門的な説明もありません。本書の基本スタンスは「BIだけではダメ」という至極当たり前のものですが、その際に、BIを諸他の政策プログラムやそれ以外の分配原理(「必要に応じた分配」や「功績に応じた分配」)とどのように折り合いをつけさせるのか、について詳しく述べている本だとお考えください。
第一部は社会学者の立岩真也によるBI(ないしBI論)は「いけている」か?に関する6章からなる論考です。構成は、
第1章 此の世の分け方
第2章 何が支持するのか
第3章 所得(再)分配に限る必要はないこと
第4章 簡素そしてスティグマの回避という主張について
第5章 労働の義務について
第6章 差異とのつきあい方
となっており、3章から6章がBIだけでは「どう」ダメなのか、そしてどうするべきなのか、が述べられています。
第二部は私(齊藤拓)の担当箇所であり、『ベーシックインカムの哲学』(勁草書房)を書いたフィリップ・ヴァン・パリースのBI論とその政治哲学の全体像をわかりやすくまとめるとともに、それを政策分析者はどのように理解すべきなのか、を提示しています。私は彼の政治哲学が導く国家像を「最大限に分配する最小国家」と銘打ちました(その意味するところは本書をお読みください)。『ベーシックインカムの哲学』を網羅した解説になっているわけではありませんが、高価で手の出ない人はこの第二部を読んでいただければそのエッセンスを理解していただけると思います。また、ヴァン・パリース政治哲学の紹介にとどまらず私自身の主張もかなりさせていただきました。個人主義的で「市場原理主義」的な主張をしていますが、一般に言われるような市場原理主義とはだいぶ違うなという印象をもたれると思います。
第三部は「日本のBIをめぐる言説」ということで私が担当しました。これまでに日本語で出版されたBI関連の学術論文やBI本をレヴューしています。ずいぶん乱暴なことも書いていますが、ここが一番読みやすいのでこの第三部だけはぜひお付き合いください。