原点回帰で挑んだ本巻とのことだが、内容的にはむしろこれまでに無い要素を用いて、改めて≪狼≫の熱き血潮を浮かび上がらせる展開だった。これまでに無い要素とは、第1巻のレビューで「傍から見れば大変しょーもない世界である。無価値である」とした、半額弁当奪取に参加しない、関知しない人のことである。半額弁当や、それに集う≪狼≫達を見下す佐藤の幼馴染み【広部蘭】の言動に読み手も時折歯噛みするのだが、同時に解らなくもない彼女の内面も示される。そこに描かれる表面上の理解と自己否定が、内心憧れ続けていた“本物”への渇望の裏返しだと気付き、佐藤がこれまで見せたことの無かった態度、視線、凛とした心意気、すなわち心から好きなことに熱中する一途な想いと空腹という根源的な状況に触発されて、一度は蔑んだ半額弁当が、スーパーが、≪狼≫達の存在が劇的に変わっていく、その経緯が何とも溜飲の下がるクライマックスとして描かれていた。最後の挿絵が見事な結末を表している。この広部さんは今後も登場して欲しい、生まれ変わった姿で佐藤の前に早く現れて欲しいキャラである。
他にも自らの想いを半ば無理矢理閉じ込めた人物が出てくる。ダンドーと猟犬群の頭目【山原】の想いもまた解るだけに切なさを内包しているが、ここにあるのは一種の諦めなのだろうか、現実的な妥協なのだろうか。そして最後の闘いにその答えは見つかったのだろうか。しかし、ダンドーこと壇堂先生も不惑を迎えて頑張るネ!
今回は著莪との甘過ぎる密着が減少した(1章の最後に佐藤と何処へ走り去ったのかは激しく気になる)代わりに沢桔の“姉妹漫才”だったり、白粉さんの佐藤集中攻撃だったりと、違った面白さを見せている。できれば里帰りしたのだから佐藤父母の大フィーチャーがあってもよかったかも(母は面白かったけど)。
初版には『新春ベン・トー 銀はがしおみくじ』なる特典しおりが付いてくる。コインで擦ると自分ならおそらく『末吉』辺りが出てくると思うが……これは剥がせんなぁ。正月らしい装いの槍水先輩を愛でるしかあるまい。