まず、よく言われることでですが「複製技術時代の芸術」はベンヤミン読みの専門家からは「出来が悪い」と評されることが多いです。ベンヤミンの持つ多面性、隠喩をベースにする記述手法とは異なる面が多いからであろうと思われます。その反面、ストレートな表現が多く、わかりやすくもなっています。その意味で入門書としては最適ですが、ベンヤミンの本来もっているアクチュアリティーをうまく表現できていません。よって「複製芸術」を読んで、「なんだこんなもんか」と思われる方もいるかもしれません。その意味でなんともアンビバレントな著作ですが、ベンヤミンのいう「アウラ」の一面を描いた著作であることは間違いないので、そのような位置づけ読むのであれば良書ではないでしょうか。
それで、まぁ以上のコンテクストを踏まえて、この「精読」ものですが、まず当然ベンヤミンについてしっかりした著作を書くのであれば、ドイツ語のプロであると同時に、他のベンヤミンの著作をしっかり読み込み、ショーレムやアドルノの書籍を参照にしたうえで、本書の位置づけをしっかりしたものにすることが必須です。特に、この著作はそのいい意味での読みやすさ故に「ベンヤミンの入門書」と言われることが多いので、なおさら、正確な位置づけや解釈が必要です。が、解説はやはり力不足の感は否めません。この著作を読んでパサージュ論あたりに手を伸ばしても、玉砕間違いなしかと思われます。しかし、それでは思想家ベンヤミンの魅力的な側面に触れることもできず、あまりに勿体ないので、この本で、本文のみを読み、その後三島氏や今村氏を参照しつつじっくり腰を据えて他のベンヤミンの著作に取り組むのがお勧めです。今村氏の「ベンヤミンの問い」や三島氏の「ベンヤミン」がいいとは思います。