ラトルで☆5つを献じるのは初めて。僭越ながら・・・。
例えば、第4楽章の「断頭台への行進」。
『幻想交響曲』という作品自体が描写音楽であることは重々承知のうえで、これほど純音楽的に美しい演奏は珍しい。管弦楽曲としての作品の天才性をこれだけ満喫させてくれるディスクはこれまでなかったのではないか。初めて聴くような印象も与えてくれる。その成功は、多分にゆったりしたテンポにある。その代償として、作品の狂気やグロテスクさは後退しているものの、アプローチがそもそもそういうものではないという気がする。
ギュンター・ヴァントの『展覧会の絵』などと似て、あくまで管弦楽曲に対するアプローチなのである。ミュンシュなど爆熱系(?)の演奏はすごいとは思うが、そうそう何度も聴けるものではない。とにかく狂気の押し売りが五月蝿く感じる(歳を食ったからか?)。
かと言ってブーレーズのレクチャー調の演奏も詰まらない。亡くなったシノーポリがやったらもっと小難しいかもしれないなあ?
ラトルの演奏は緻密なアナリーゼに基づきながらも、ごく自然な表出になっているように思う。ストラヴィンスキーのシンフォニーや本ディスクでは、緻密さと余裕のある流れが合致した好演であるが、ブルックナーなどではどうもチンマリしていけない。そこがラトルの不思議なところだ。