待ちに待った最新刊は、珍しく戦闘シーンが皆無に近い。しかし物語はダラダラと進むのではなく、張り詰めた緊張感が持続している。本巻では、ヴァンディミオン家の人々の個性的で力強く、同時に奔放で極端な存在が描かれる。ファルネーゼを中心に兄・父・母の実存が開示され、巨大銀行たるヴァンディミオン家の内幕がようやく開かされる。特にファルネーゼと彼女の母との対話が際立つ。かつて聖鉄鎖騎士団長を務めていた時分のファルネーゼは、意識で身体をがんじがらめにしていた。しかし彼女はかつても今も『言葉に出せない鬱屈した気持ちを思いもかけない行動で表してきた』ことを母から告げられそれを自覚する。一人の人間の変遷を決して妥協することなく描く作者に敬意を表したい想いに駆られた。