ストーリー解説を読むと、ありがちで面白みのない映画みたいに思う。僕も、レンタル店でキャンペーン中で、3本借りるよりも5本借りた方が安いという不思議な状況で、穴埋めに借りてみた、聞いたことも無い作品だった。
でも、「スラムドッグ・ミリオネア」を含む話題の映画3本よりも、この映画の方が僕には心に残った。子供のエンゾは本当にけなげで無力で無垢だ。可愛らしい、なんていう言葉では適切じゃない。子供というものの無垢な姿が、そこに凝縮されている。そして、ほとんどしゃべらないのに、たまに話す言葉がグッとくるんだ。
そしてまた、森を出て助けを求めに急ぐエンゾの姿が、たまらない。その醜く汚れた外見がまた、たまらない。また、あるシーンで、彼が呟く「森がいい」という短いセリフは、シナリオとしても完璧な瞬間だと思う。その一言に、観ているこちらが、キュンと切なくなる。きっと世界中の人が感じる、この子を守ってやらなければという気持ちが、呼び起こされる。すごいシナリオだと思う。わざとらしくなくて、作り物めいていない、本当の言葉だ。そう、子供はそんな言葉を口にするんだ。だから、守ってやらなければならないんだ。そう感じる。
物語の中で、失業者が200万人と出てくる。今の日本の状況を考えれば、他人事とも思えない。大学を出た若い人たちに、働く場所がない。見つけても、劣悪な職場ばかりで、続かない。これは、遠い国の出来事ではない。
この映画には、スペクタクルは無い。劇的な高まりも無い。感動的なものすごいラストも無い。
でも、嘘の無い映画で、原作が持っていたいくらかの真実の3分の1も表現できなかった「スラムドッグ」よりも、ずっと心に響いた。
道徳を説いている映画じゃないけれど、僕はこれを、とても良心的な映画だと感じた。