スペインの田園地帯に若き脱走兵が紛れ込んでくる。初老の画家は彼を匿うが、画家には若く美しい四人の娘がいた。彼女たちはかわるがわるこの脱走兵を誘惑しようとするのだが…。
自由な空気に満ちた新しい時代が到来することを皆が予感し、それゆえに少々“たがのゆるんだ”感のある四人姉妹の奔放な恋のさやあての物語です。恋の相手のプレイボーイ風脱走兵クンもたじたじといったところ。「真夏の夜の夢」「十二夜」「空騒ぎ」といったシェークスピア劇を彷彿とさせる良質の喜劇です。 オスカー外国語映画賞にみごと輝いただけのことはあります。
それにしてもこの映画の「Belle Epoque(美しき時代)」という題名は意味深長です。映画は1930年代のスペインで共和派が選挙に勝って素晴らしい時代が来ると思われる時期を描いていますが、この頃からほどなくしてこの主人公たちが暮らす国は同朋同士が血で血を洗う内戦へと突入します。内戦はフランコ率いる軍の勝利に終わり、その後スペインは40年近くに渡る独裁政治を経験することになります。
ですからこの映画は内戦前夜にあたる、真に「美しき時代」の末期を描いているわけです。そのことを思いながら見るとラストシーンで、旅立っていく娘と脱走兵を見送る父親の表情が大変淋しげなものに映るはずです。
スペインという国のもつ哀しき現代史を背景とした、実に巧みな悲喜劇といえるでしょう。