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そして、そこから著者の中で始まる長い長い自問自答。彼女自身の半生にわたるテーマであり、本書のモチーフでもある「意志不疎通性」は、時には影のように、時には手の施しようもなく深い暗い溝となって、歴史や文化・社会といった背景の異なる人々の間に横たわる。それはなにも民族間だけの問題ではない。フランスと日本を行ったり来たりする生活を続けてきた著者が体感する、ものすごいスピードで変化してく日本社会と、その社会の住人とのギャップ。パリで生活した年月が長くなればなるほど、自らの中に赤く燃える日本人の血を自覚せずにはいられない著者と、パリで生まれ育ったフランス人である一人娘との間のギャップが切ない。自らが苦しみ続けてきた問題と正面から対峙し、地球規模に広がるそれらの実態を、パリでの生活や日本はもちろん世界中の様々な地域で出会った出来事と絡め、自らの半生記と交差させながら、丹念に描いている。
もともとフィクションの世界の住人だった著者が、自身の半生を通じていつしかノンフィクションの世界に魅せられていった。駆り立てられるように、政情の不安定な国、民族間の争いの絶えない国に飛んで行き、その実態を、そこに生活する人々を自らの目で確かめてみなければ気のすまない著者の姿が印象的である。感性が強く鋭く豊かである著者が、肌で呼吸した現実を、自らの経験というフィルターでこして、紡ぎ直し丹念に織り上げた、紀行文であり、ルポルタージュであり、半生記であり、エッセイである。
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