教育産業最大手のベネッセが日本の教育問題についてどう取り組んでいるかをアピールし、目指すべき教育のあり方を読者と共に考えようとする一書です。
民間企業の立場で教育と関わり、公教育を補完することで成長を続けてきたベネッセですが、文部省が1999年に学習指導要領を改訂した(ゆとり教育の推進)を境に、教育をめぐる社会環境が大きく変わってきました。この環境の変化を教育現場で敏感に感じているベネッセ社員たちは、教育とは何か、学力とは何か、ということを真剣に考えながら仕事をしています。
議論百出のこの問題に正解はありませんが、本書では、お役所とひと味違う、地に足のついた意見が表明されていました。
たとえば、第1章では高校事業部の営業本部長が登場して、高校の先生が置かれている状況を一緒に悩み、解決の道を模索しようとします。
いまの高校は、大学と中学の両方からしわ寄せを受け、サンドイッチ状態になっているそうです。つまり、大学からはそれ相応に学力を向上させて送り出すことを求められているのに、中学から受け取る子どもたちは、学習習慣がついていない。おまけに、生活面や部活指導、クラス運営に大忙しで、教科指導に集中していられません。
それでも、熱心な先生が生徒のことを話していると、本当に嬉しそうな顔をするのだとか。
その現場の先生に役に立てるサービスとは何か。高校事業部の挑戦が続きます。
本書が刊行された2003年は、実はベネッセの経営がどん底の年でした。収益の柱だった進研ゼミの会員数がピークの420万人からたった3年で370万人まで激減してしまったのです。
業績がV字回復した直接の要因は経営改革だったのかもしれませんが、会社が苦しいときも真剣に本業に取り組んできたことが復活の根本要因だったのではないか。
本書を読んで、そう思いました。