既に市販のVHSビデオ、テレビ録画を持っていますが、待ち望んでいたDVD版が発売されたので購入しました。映画自体は紛れもない名作として差し支えないと思います。
映画のストーリーから同性愛映画だとみなされる向きも多いようですが、そうではないと思います。美は芸術家の努力によって作り出されるものと信じてきた老作曲家が自然に生まれ出でた美の化身とも言うべきタジオに抗うことも出来ずに惹かれていく過程が映像でつづられています(アッシェンバッハが惹かれる対象が異性である美少女だったら単なる性愛の対象ということになるでしょうが、同性の美少年ということでタジオの性別も超越した「美」に惹きつけられているということがよりはっきり見て取れると思います)。
ただ、今回のDVD化で、これまでは字幕に出てこなかったタジオやその周りの人々の会話が出てくるのはどうかと思いました。
この映画の魅力はタジオのセリフが一切ないことにあったと思うのです。アッシェンバッハにとってタジオが触れることのかなわない遠い存在であること、その距離感が、タジオのセリフがなく、その外見以外にどんな少年なのか判断する手がかりが与えられないことによって観衆の我々にも伝わってくるのですから。これまでに他で既にこの作品を見ている人にとっては興味深いものでしょうが、初めて観るという方にはできることならタジオのセリフ字幕のないものを先に観ていただきたいと思います。