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5つ星のうち 5.0
私の人生を決定的に変えた映画、そして生涯のマイ・ベストフイルム, 2009/2/12
レビュー対象商品: ベニスに死す [DVD] (DVD)
もし私がこの映画を観なければ、映画監督になりたいなどとは決して思わなかった・・・。 それは、私が18歳の時でした。偶然、NHK教育番組で観ました。 当時の私は、完璧に理解できませんでしたが、なぜかこの映画の中に「完璧な美」を見出しました。 そして映画監督になりたくなった。 その後、トーマス・マンの原作を読み、ビデオやDVDで何度も観ました。 全てのアーティストは、死ぬまで「美」を追い求める。 その主題にすごく共感を感じました。私も「美しいもの」を愛してしました。稚拙ながらも。 それ故この作品は、私に芸術家は深い苦悩と高い美意識をもっていなければならないことを教えてくれました。それ故に私にとつては尊い。 我が映画史上No.1の映画です。 表面的には「デカダンス」あるいは「ホモ・セクシュアル」な作品かもしれません。しかし、ヴィスコンティが問うているのは「芸術家はどうあるべきか」です。 世間ではホモ・セクシャルであるアウトローな作品かもしれませんが、私にとっては、自身の生涯を変えた、とても大切な作品になりました。 ヴイスコンティ作品については全て観ていますが、「ベニスに死す」は、グスタフ・マーラーの音楽、トーマス・マンの原作の優れた変奏とが相まって、彼の美意識を極めた作品だと評価します。 私としては、もしあの時、この映画と出会ってなければ、私は全く異なった人生を歩んでいたと思います。それは、私にとって「決定的な瞬間」でした。正直に言うと、出会わなかった方が、私の人生は楽だったと思います。 日本にも小津・黒澤監督がおり、どちらも尊敬し、愛しています。しかし、私が最も尊敬している監督はイタリアのヴィスコンティであり、我が人生のベスト・フィルムは「ベニスに死す」です。 もし、私があの作品を監督できたら、もう、いつ死んでも思い残すことはないと思える作品で す。 それ故、ハードルが高すぎて、その壁を乗り越えられず、決して、いつ死んでもかまわないとは思えない私だったりします。
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5つ星のうち 5.0
ベニスに向かう船エスメラルダ号に一つの鍵が, 2010/3/1
レビュー対象商品: ベニスに死す [DVD] (DVD)
美しく官能的なマーラーの5番の調べとともにエスメラルダ号がベニスに向かう。 ベニスをいったん去ろうとした(決して本意ではなく、芽生えてた愛を封印しようと逃げ出した)主人公が、再度ベニスに戻る船「エスメラルダ」に彼の心の鍵があると思う。 「エスメラルダ」は、彼が以前、買った美しい少女の娼婦の名前で「禁断の愛」の象徴。 当時一般的には、口に出すのもはばかれる、彼が愛情をそそぐ対象の、無垢で美しき少年への愛の告白という目的を得て、主人公は再び「生きることと、愛すること」の喜びを取り戻す。 美術、セット、撮影、出演する俳優陣の衣装といい、極上の作品。特にタージオ役のビヨン・アンドルセンのギリシャ彫刻のような神々しいまでの美しさに酔う。(彼は日本でレコードも出した) シルヴァーナ演ずる母親(衣装は、監督の母親が着ていたドレスを参考にして作られた)の、肖像画のごとき19世紀の貴婦人の気品と美貌。ため息もの。 「メリー・ウィドウ」の調べが流れるホテルのロビーに飾られた、たくさんのアジサイの花々、このシーンだけでも圧倒される。今は、日本人が団体旅行でも気軽に訪れることができるベネチアだが、19世紀末は、ヨーロッパの貴族、上流階級、富裕層のリゾート地。そのリゾートファッションの優雅なこと。 監督の男色とアッシェンバッハの感情が、幾重にもだぶってみられる。 特に夕景の浜辺で、ラストシーンでの神が創造した「刹那的な少年の美」「少年の命の躍動」と、愛をつかむためにほどこした哀しき若返りの化粧とヘアダイが剥げ落ちながら、命尽きていく中年男。この対比が見事。 私にとって、永遠の名画。
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5つ星のうち 5.0
マーラーに捧ぐ映像美, 2007/6/1
マーラー第5交響曲第4楽章アダージョが流れる中、主人公グスタフ・アッシェンバッハ(ダーク・ボガート)の乗った汽船が朝靄のたちこめるベネチアに入港する・・・。モネの「日の出の印象」を見ているかのようなこの冒頭の絵画的シーンによって、観客は美しくもどこか退廃的なヴィスコンティの世界に引きずり込まれていく。 トーマス・マンの原作では小説家だった主人公が、作家の意図を汲み、映画の中ではよりグスタフ・マーラーその人に近い作曲家兼指揮者に置き換えられている。写真をみると、映画の中のアッシェンバッハが、かなりマーラーのそっくりさんなのがわかる。 美を制御することを主張するアッシェンバッハではあったが、ベネチア(正確にはリド島)でポーランド人一家の少年タジオを見たとたん、その完全な美の虜となってしまう。ホテル内でタジオを見かける度にドギマギするアッシェンバッハは、映画を観ていると情けなくなるぐらい哀れでしかも醜い。 ヴィスコンティはその醜さに追い討ちをかけるように、老マエストロに死化粧を施す。リドの海辺にたたずむタジオを、浜辺から見つめるアッシェンバッハの額から白髪染が溶けて混ざった黒い汗が醜く滴り落ちる。逆光を浴びながらタジオが指差した先は、天国だったのか地獄だったのか。その答えは、美をひたすら追い求めて息絶えた主人公にしかわからない。
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