全編美しい映画で絵画のような印象を与える傑作です。
中でも主人公を死に誘うようなタジオ=ヴョルン・アンドレセンの美しさと
冷たい仕草が良く話題になりますが、
個人的にはやはり美少年に惑い、最後悲劇的(喜劇的でもある)に死んでいく
音楽家アッシェンバッハ=ダーク・ボガード氏の演技が素晴らしいです。
タジオを見てからの初恋の少年のような戸惑い、思い切って諦める為に
ベニスから去ろうとしたものの手違いでベニスに残ることになった時の歓喜(!)
自分の死を自覚した時の絶望…。
ほとんど台詞は無く仕草と顔の表情で表現しているのがすごいです。
この映画そのものはアッシェンバッハの一生涯を追いかけている構成でありまして
所々に挿入される回想シーンでの子供と戯れる父親の彼の姿は
その後の人生の残酷さを感じましていつ見ても泣けます。
この映画に出演した後にボガード氏は
「これ以上の演技の出来る映画はないだろう」と語ったそうですが
確かにアッシェンバッハを演じられるのに一生涯分の感情を使われたと思います。
余談ですが、指摘されるまでボガード氏が「地獄に墜ちた勇者ども」の
フリードリヒも演じられていたとは気がつきませんでした。
(全然印象が違います)
上映されてから三十数年、
ボガード氏始め出演者の大半は鬼籍に入りベニスも変わりました。
しかしこの映画の美しさはいつまでも変わらないでしょう。