中高時代に筒井康隆に熱中し、電車の中であろうが家の中であろうが、「ケケケケ」と笑って楽しんでいた。
当時は、筒井康隆はなぜ直木賞が取れないのかと本気で考えていた。しかしながら、年を取ってから本書を読み返すと、それは無理だったと思う。大人から見ると、筒井康隆の革新的な面が評価されず、逆に文章の青硬さや人物描写・背景設定の稚拙さが目立っていたのだと思う。
10代の時には、テンポの良い場面展開と、グロテスクな描写に心を奪われたものだが、今読み直すと、感動する箇所が異なっている。
例えば「血と肉の愛情」に見られる愛情と食人を巡る心理描写や、あえてこの時代にベトナム戦争を思い切り風刺する胆の太さに大きなインパクトを感じた。
当時も感じていたことだが、筒井康隆についてはSFのカテゴリーに縛られた評価をしてはいけない。現代への提言や文明批評、人間心理の洞察に関するさまざまな描写は、あの頃の未来であった現在においても光り輝いている。SFを身にまとった文明評論家だったというのは買いかぶりすぎだろうか。
新潮文庫にも筒井康隆の傑作は多いが、七瀬シリーズに代表されるように洗練された作品が多い。一方、本書はそれとは趣を異にしている。ハチャメチャ、グロテスクさにおいては群を抜いており、それだけに力強さや著者自身の若々しさが作品があふれ出ている。