チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23」の第3楽章が1枚目のラストに収録してあります。様々なピアニストの演奏で聴き慣れた音楽のはずですが、アクセントの入れ方、リズムの切れ味、粒立ちの良い音、どれをとっても音楽が見事な自己主張をしていました。
オーケストラをピアノ一つでドライヴしていることが分かる大団円でした。これほど大きな輪郭を描くピアニストは少ないのではないでしょうか。特筆すべきことはミスタッチを聴くことがなかったことです。早いパッセージをものともせず、でした。本格的に師事しているダニエル・バレンボイムの指揮ですから、その師匠を前にして実に堂々とした協奏曲を披露しています。この時、実に20歳。まさしく天才という名にふさわしい演奏です。ヴィルトオーゾ揃いのシカゴ交響楽団を圧倒するような演奏で、購入されたらまずこの演奏を聴かれるとラン・ランの真価が如実に理解できるでしょう。
カーネギー・ホールでのライヴ演奏のリスト「愛の夢 第3番」の瑞々しい解釈もまた彼の個性を際立てています。ダイナミックな表現ですし、目の前で彼の息遣いが聞こえそうな演奏で、実に躍動感に満ち、幸福感に支配されている演奏でした。
2枚目は珍しい演奏を集めていました。1曲目は戦前古賀政夫の編曲でヒットした「南の花嫁さん」の原曲である浙江省出身の任光「彩云追月」を演奏しています。ラン・ランの父親が二胡奏者だったと吉村渓氏のライナーノーツに書いてありますから、父の演奏を聴いて育ったことも影響があるのでしょう。
ラフマニノフの「前奏曲 ト短調 作品23の5」も珍しい曲でした。彼の音は音符が空中に舞うような粒立ちのよい切れ味があり、ハッとするような新鮮さが伝わってきます。