先日、新メンバー3名加入という衝撃的なニュースが入ったばかりのくるり。
このタイミングでの発売である。今作はこれまでの活動に一区切りをつけるためのものと考えていいでしょう。
前ベスト『
TOWER OF MUSIC LOVER』の発売から既に5年経過しており、間隔的にも丁度いい言えます。
収録曲は『
ワルツを踊れ』以降のシングルを中心にアルバム収録曲『恋人の時計』や映画に提供された『キャメル』、『奇跡』に加え未発表の『最終列車』や民謡のカバーである『鹿児島おはら節』を含む全14曲。
前ベストと重複する曲は1つもありません。
さて、「『ワルツを踊れ』以降、くるりは変わってしまった」という声をよく聞きます。
具体的には、性急なリズムの曲、ハードな曲、冒険的な曲をあまり作らなくなったといったところです。
これは5作目である『
NIKKI』には既にその兆候があったことで、
端的に言うと、肩の力を抜いて書いたように聞こえる曲が増えたということでしょう。
実際に彼らが「肩の力を抜いて曲を書いている」かはともかく、『ワンダーフォーゲル』や『青い空』をアンセムにしてきた彼らのファンにとって、この変化は必ずしも歓迎できたものではなかったのではないでしょうか。
ティーンエイジャーの心のもやもやを、少しひねくれた曲調で、万感を込めて歌ってくれる彼らに惹かれていたファンには。
とはいえ、この変化を不自然なもの、ファンに対する裏切り、などと言うことは果たして正しいのでしょうか。
ミュージシャンはアイコンである以前に人間です。
少年のふりをし続けることはできますが、現実に目を向ければ、いつまでも少年のままでい続けるわけにはいきません。
作曲技術が向上し、精神が成熟すれば、感情過多な曲を避け、余裕を持った曲を作るようになるのは自然なことです。
不惑を過ぎて十代の少年のような歌を歌う昨今の「アーティスト」と比すると、こちらの方がより自分自身に対して誠実であるように、私には思えるのです。
先のレビューの方が書かれているように、このアルバムの選曲にはある種の統一感を感じます。
極めて日常的で素朴な、必要以上に感情によりかかってこない楽曲たち。
このアルバムはミドルテンポでペダルスティールの音が優しく響く『奇跡』から幕を開け、シンプルで流れるようなメロディーとファルセットが美しい『旅の途中』、管楽器のハーモニーが綺麗な『さよならリグレット』へと、極めて自然な形で進行していきます。
いくつかの楽曲はオーケストラによって彩られているものの全体として奇抜に聞こえるアレンジはなく、しかしよく耳を傾けると彼らが凝らした趣向の数々が分かるようになっています。
強いて難点をあげれば、この統一感のためか『愉快なピーナッツ』や『太陽のブルース』などの優れた楽曲が収録されなかったことでしょう。
今作に収録されなかった『
魂のゆくえ』からの数曲は少し内省的すぎたのかもしれませんが、素晴しい曲です。
このベストから近年のくるりに興味を持った方には是非聴いて欲しいです。
また、『ジュビリー』と『言葉はさんかく こころは四角』がSingle Ver.でないことや、CD1枚にしては多少値がはることなどは少し残念です。前作はそこの部分もきちんと配慮されていたので。その点から星は4つにさせていただきます。
新メンバーが加入し、活動の拠点を京都に移すことでこれからも面白いことをしてくれそうなくるり。
今後の彼らの活躍を、このベストに収められた珠玉の曲を聞きながら見守っていこうと思います。