これは最も有名なブルースのアルバムであり、同時に傑作だという事は恐らく未聴の方でも知っているくらいだろう。現にその通りであり、例えそれぞれ好みはあれど、ブルースの魅力が恐るべき高密度で凝縮されている事はオールドデルタ好きだろうがモダン好きだろうがブルースに慣れ親しんだリスナーなら満場一致でにやけ顔という代物である。周知のようにブルースはほとんどが定型句で成り立つ音楽であり、和声展開やメロディアスさに焦点はない。そのため、ブルースマンごとのクセや個性、声質、細かいタメのタイミング、さらには録音の質だとか本人の体調だとかやる気とかというあたりが否応なくレコードからは目立ってくる。いわばその人そのものがドキュメントされているようなものだから、ブルースが生々しいとか現場とかと形容されるのだろう。このマデーという人はブルースマンの中でも一際重く図太い音を出すシカゴの王様だ。歌いっぷりも豪快で、その男っぷりを見せつけられる。おまけにこのアルバムは歩くよりも遅いような息を殺し這うようなダウンホーム系のスローテンポの応酬である。図太く重く豪快、これはたまったもんじゃない。もし入門の方で軽さやリズム感を求めるならサニーボーイなどを最初に聴く方がよほど聴きやすい(←ただし強烈)。それも好みだ。だが、最初から究極で行きたいという方、待っておりました。何を隠そう、初めてブルースのコーナーに立ち、選んだCDが正にこれだった私は出だしからいきなりビビらされてしまった。だがあれ以来、いつでもここに帰ってきた。あれだけビビっていた音も、時と共にその表情を変えながらねんごろの仲となり、CDジャケットも気づけば使い込まれたダメージ感で他のCDを威圧している、さすがだ。50年代シカゴブルース最高の瞬間が記録されたCDが部屋にあるとお化けも怖くない。