僕が洋楽ポップスを聴き始めた1979年頃には、ジャニス・イアンは既に過去の人になり始めていて、その名前だけは知っているものの、作品それ自体については深く知ることもなく今に至った。でも、多くのミュージシャン、シンガーの方々から絶大なるリスペクトを受けているということはよく知っていたので、いつか訪ねてみたいアーチストだとは常々思っていた。
で、今回、たまたまこのベスト盤を聴く機会があったので、やっとこさその音楽に触れられることになった、というわけです。
70年代前半には、彼女のような女性SSWの黄金期があって、それぞれに傑作シングル、アルバムを発表し、商業的にも成功を収めていました。
ジョニ・ミッチェル、カーリー・サイモン、キャロル・キングetc・・・
そうした中にあってジャニスというのは、僕の持っている印象だと、そんなムーブメントの最終ランナー的存在であり、この後ロックバンド/アーチストのカミングアウトを中心としたソフトロック/AORブームの勃興〜大成功という路線への移行期の、その狭間でグラミーを獲得する等の活躍をした人だったという認識であります。
したがって、本作でも伺えるように、彼女の楽曲というのは、AOR的甘々感、並びに産業ロック/ポップ的媚び媚び感とは無縁の、ピュア&ストイックなものであり、所謂ヒッピー/フラワームーヴメントの残り香をそこはかとなく漂わせるものとなっていると思います。
それはリリックの面でも如実に顕れていて、そこには思想性の高い崇高な世界観が展開されるものとなっています。
つまりは、彼女の作る音楽には生半可な妥協はなく、一本筋が通っているということなんだと感じました。
そういった一徹さが、恐らく本国においては、一発屋的なアーチスト、過去の人的な存在に甘んじさせる要因となってしまったのかもしれません。
70年代後半というのは、とにかくシーンの産業化が物凄い勢いで進んだ時期であり、そんな中で彼女のような頑固なミュージシャンたちの多くが「時代」という名の篩にかけられたという側面は、あったと思います。
このベスト盤は、そんなジャニスのディープ&コアなスピリットをぎっしり封じ込めた好盤になっていると思います。
アコースティックなフィーリングの演奏スタイル、ハートフルでピースフルな歌心等を中心に展開しつつも、決して大衆迎合はしないという強靭さ、骨太さを強く印象付けられます。
ただ、僕のような初心者向けには、もう少し楽曲を時系列に分かり易く配置して欲しかったり、スタジオ録音中心の選曲にして欲しかったり・・・という希望も無くはなかったのですが、収録されている各曲自体については、文句のつけようもありません。
彼女の音楽に出会えて良かったと、思っています。