実は、私自身は小説家になろうなどとはこれっぽちも思ったことは無く、恐らくこれからもないでしょうが、ベストセラー小説を書くためのノウハウって一体どんなものだろうという、単純な好奇心からこの本を手にしました。
この本は、作家を志す人へ向けて、その作品がベストセラーとしてヒットするために押さえておくべきポイントを、実際にベストセラー作家である著者の体験を基に詳しく具体的に書かれています。
著者が作品を評価する基準は単純明快。
大衆に受け入れられてこそ意味があり、一部の評論家や限られたファンの賞賛を得たところでヒットしないことには値打ち無し、と言う売り上げ至上主義ともいえるべきもの。
たとえヒットしなくても、真に良い物なら後世に残るはず・・・などという甘っちょろい幻想はもちろん頭ごなしに否定されます。
この書物に対して賛否両論あるのも頷ける話で、仮に私が小説家を目指していたとしたら果たして素直に賛同できたかどうかは甚だ疑問の残るところです。
しかしこの賛否両論あるだろうハウツー本も、小説を作る側ではなく私のように読む側として手にした場合はまた、一味違った楽しみ方ができるものです。
実は、これを読み進めるうちに私が常に思い描いていたのは、小説ではなくアメリカのTVドラマの「24シリーズ」や「プリズンブレイク」などでした。
これらのドラマは事実多くの人の支持を得ているわけですが、私自身も大ファンで、よくもこれだけ面白い展開を毎回思いつくものだと感心することが多かったものです。
そして、いったいどうやってこんな話を思いつくんだと、ただただ感嘆するしかありませんでした。
ところがこの本を読んでみると、なるほどあの面白いストーリー展開にはこういう仕掛けがあったのか、あの設定は適当なように見えて実は非常に計算されたものだったのか、などと言う具合に、作品を裏から支えるある種の合理精神を読み解く糸口を見つけ出せます。
そして再度作品を見直すと、以前は見落としていた緩急のつけ方の妙や、登場人物の強い動機付けを行うための背景描写など、それまで漠然とよくできてるとしか思っていなかったことが、一つ一つ粒のように目の前に立ち現れてくるようになり、より一層作品個々の個性が認識できるようになります。
これはもちろん小説やTVドラマにとどまらず、映画、コミック、演劇など、ストーリーを用いたおよそあらゆる娯楽作品を楽しむ際に有効だと思われます。
というわけで、様々な娯楽作品を今までとは少し違った角度から楽しんでみたいという方がいたら、是非この一冊をお薦めいたします。