著者は風俗で働く人などの底辺にいる人よりも、少し上の立場からものを書いている。
今まではそれがいやらしさになってしまっている部分もあったのだけど、
この本は、その「少し上」の視点が成功していると感じた。
特に、文章表現が平易で凡庸であるところに
かえって主人公の悲惨さが浮き彫りになっている。
自己顕示欲の肥大、現実認識の甘さ、劇場型の個人生活など、
「自分だって同じだ」と、読み手自身の心の穴を覗かせるおそろしさがある。
読後感をさわやかに感じたのは徹底した悲劇だからか。
著者のブログを見るに、
作家業とアルバイトの狭間でいつ作家として食えなくなるかわからない非常に切迫した状況にあるようだ。
著者の現状と主人公の立ち位置も入れ子式になっている、という現代を反映した劇場型小説だと思う。