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著者ギッシングは、将来を嘱望された学生でありながら、娼婦に入れ込んで学友の財布からお金を盗んだために放校。
裕福な家族からも絶縁となった。
その後、その娼婦を妻とするも夫婦仲はうまくいかず、その後娶った妻も家庭には不向きで、仕事に打ち込んだものの世間には評価されず、栄養失調で体を壊し、若くして没する。
ヘンリ・ライクロフトが自宅のソファで眠るように身罷ったのに比べて、何たる差。
ギッシングが夢見たヘンリの生活は、若い頃に道を踏み外すことがなければそのままギッシングの生活とも成り得たのに。
著者のその他の著作は、「無階級の人々」「ネザー・ワールド」「三文文士」「流謫の地に生まれて」など苦いものが多いが、この
「私記」だけにはのどかでゆったりした空気が流れている。
この「私記」の原稿はギッシングの死後発見された。
生活のために短編を投売りする生活の中で、この本を書くことが彼の唯一の魂の逃避場所だったのか、と思う。
田園の風景、安穏な生活、小鳥のさえずりの美しさは、ギッシングの幻想の中から生まれた故である。
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