「愛の狂乱 ソプラノ独唱と器楽のためのカンタータ」は、アントニー・ヒックス氏の解説によると、1707年に上演されたようです。ヘンデルが22歳ですので若書きといってもよいのでしょうが、優れた完成度を誇っている作品でした。
ナタリー・デセイと親交の深い女性指揮者のエマニュエル・アイムがハープシコードを受け持っていますが、アリアの伴奏など実に見事で、バロック・オペラに手腕を発揮している指揮者の片鱗が伺えました。
7曲目の「その陰気な帆を捨てなさい」のアリアを聴いても分かりますが、後半部分の箇所では、エロイーズ・ゲラールが演奏するリコーダーのフレーズを声で表現していました。コロラトゥーラ・ソプラノの本領発揮ともいえる歌唱ぶりです。高音の透明な響きは絶品でした。音程が確かで、ピタッと合う様は生理的な快感をもよおします。
「アーチ、ガラテーア、ポリフェーモ」からとられた「ここでは小鳥が喜ばしげに木から木に飛び回り(3声のカンタータ)」のアリアでも、デセイの優れた表現力を確認できるでしょう。開放的で優雅なヘンデルの個性が強く感じられる演奏でした。
「心が躍る(ソプラノ独唱、オーボエと通奏低音のためのカンタータ)」での早いパッセージを歌うデセイのメリスマは正確なピッチを維持していました。音程が変化しても響きの質が変わらないので、上質の楽器のような感覚で受け取っています。バロック音楽でもその類まれなる表現力は健在でした。
オーケストラのル・コンセール・ダストレはピリオド楽器の集団ですが、演奏の質の高さはすぐに分かります。リーフレットには解説のほか、歌詞と対訳(おずさまゆみ氏記載)が所収してありました。