ヘミングウェイと言う作家については、「誰がために鐘は鳴る」「武器よさらば」「老人と海」と言った長編小説は読んでいましたが、短編となるとここにも取り上げられている「キリマンジェロの雪」くらいしか読んでいませんでした。
こうして14編の短編を読んでみると、この作家がいかに人物描写に優れており、「人間」と言うものを常に考えていたのだなと言うことが良く解ります。
「キリマンジェロの雪」を除いて、もっとも印象に残ったのは冒頭の「清潔で明るい場所」です。
全編に漂う「虚無感」がユーモアと言うオブラートに包まれて、心地よく心に浸み込んできます。
何と言う世界なのでしょう。
この短い小説の中でこれだけの雰囲気を伝えうるのかと、感嘆しかありえず、何度も読み返してしまいました。
その他の短編も皆凄い作品ばかりですが、猫好きの私としては、「雨のなかの猫」が本当に可愛い作品ですが、気に入りました。
「キリマンジェロの雪」に関しては、何度読んでも素晴らしいと思うのですが、冒頭に書かれているキリマンジェロの山頂近くの豹の死骸の話は、即ヘミングウェイと結びついていて、忘れられない文章です。
短編小説の楽しさを十分に堪能させてくれた作品集でした。