ノルウェーの大戯曲家、イプセンの悲劇作品です。
やや常軌を逸した所のある複雑な性格の美しい容貌の女性、ヘッダ・ガーブレルと善良で平凡なブルジョワ学者の夫テスマン、その旧友レェーヴボルグと愛人エルヴステード夫人、ヘッダに気のある俗物判事ブラックなどが主な登場人物です。
ヘッダという女性は、容姿や運には恵まれているにも関わらず他人に対する関心が薄く、また世の中を軽蔑しており、自分というものを持っているようで持っていない(そのために嫉妬深い)、何のために自分は生きているのか分からないという潜在的な欲求不満を抱えている女性だと思いました。かなり違いはあると思いますが、最後に自殺をするという共通点もあってか、何となくどこか樋口一葉が「にごりえ」等で描く女性像に似ているという印象を受けました。
『幽霊』の主人公アルヴィング夫人もそうですが、ハムレットを思い起こさせるようなヘッダの逡巡というか悶えというか揺らぎというか、性格の複雑さというか、そういうものがよく描かれていて面白く感じました。
最後自分が美しいと考えるやり方(彼女の元愛人ができなかったやり方)で自殺をするということから見ても、ヘッダは本人にとっても漠然と、しかし確実に<抑圧された>人間であり、死という形でそれに彼女なりに抵抗をしたのではないかと思います。しかし、そうは思いつつもこの結末の意味に関してはとりわけ未消化でありますので、またしっかりと思索していきたいです。