株取引や、そもそも業界の用語に疎いのだけれど、本書はそうした分かりにくい言葉には同じページに注があるため読みやすかった。内容は副題にある通りで、大半は著者の快進撃が続く。が、ええ?と思うようなあっけない宣告を受けるものの、本人が対して打撃を受けていないかのようにサッと立ち上がり、次のステージに進んだという印象を抱くため、読んでいて面白い。
中心となる時期は1999年頃から2009年頃。そのため9.11やリーマンショックなどが大きく経済に影響をもたらし、その中を著者は綱渡りしていく。9.11の時に著者が受けた衝撃から「考えることも想像することもできないようなことが実際に起きた」と強く感じているのだが、このあたりの記述は日本の今の3.11に重なってみえる。
著者はその昔、アイスホッケーで活躍し、NHLへの入団を狙うほどの実力者だったらしいのだが、そんな著者がなぜ株の世界に?というのも読むうちに段々と見えてくる。両者をつなぐものは圧倒的なスピード感なのだ。普段から迅速な対応に慣れていたせいか、アメリカ経済を揺るがすような大きな出来事にもそう慌てた風はない。また、副題の「絶好調からどん底へ、そしてまた立ち上がった」は、アイスホッケーとヘッジファンドマネージャーの両方の世界で著者が体験したことなのだ。立ち上がり方が人並みではない。著者ならどこでも生きていける。
著者いわく、大学時代などは作文には苦労したとあるのだが(本書に名を連ねているリッチ・ブレイクの助けもあってか?)、当時の様子を生き生きと描写しているし、読んでいて比喩などが面白い。インターンシップを始めた頃、あまりにも場違いな格好で現れた自分のことを服装も安物の「フォレスト・ガンプ」に喩えたり、この業界のお互い、食うか食われるかの熾烈な争いを「チーズ・ローリング・フェスティバル」(「急斜面を転げ落ちる円盤状のチーズを群衆が追いかけるイングランドの年中行事」)と表現する。またライバルにこっそりあだ名をつけているのだが、「パーマアフロ」とか「ジャイアント」と言われるとすぐさまイメージが頭に浮かぶ。
著者の現在は、ブログ活動などを経て、リサーチの会社を起業しているせいか、リーマン・ショック前後の、そもそものヘッジファンドやウォール街のやり方などには(当時から)否定的だ。当時何が行われていたのか、経済には疎い自分にも概要を教えてくれ、またそのスピードを体感させてくれた。