著者は『男はつらいよ』や山田洋次監督に関する著作のある大学教授。私自身が大の寅さん
ファンであるので、割り引いて評価する必要があるが、やはりこの本はお奨め。2年前に単行
本で発行されていたらしいが、まったく気づかなかったので文庫での発行に感謝。
タイトルは少し長いが、「その通り!」と共感。偉い先生たちの処世訓やら人生論などより
も、人生や家族、生きるために大切なことを教えてくれるのが『男はつらいよ』であり、寅さ
んをはじめとする登場人物の数々の“名言”なのだ。
“第一章 心がまっすぐになる「寅さん」のひと言”から“第六章 生きる勇気がわく「寅さ
ん」のひと言”まで、もちろん「寅さん」の言葉のみならず、全48作のシナリオを読み抜いた
著者に選ばれた、会話、モノローグ、手紙の文句などがぎっしり詰まっており、寅さんファン
も、そうじゃない方も、日本人ならうれしくなる言葉の宝庫である。
山田洋次という、冷徹な目で日本人や家族の原風景に迫り続ける映画監督と、渥美清と
いう稀代の名優によって初めて成し得た数々の傑作。そこには、多くの人生哲学が織り込ま
れている。山田洋次は、「笑い」があって初めて人が心を開くということを知っている。
巻末の全48作のリストもうれしい。読みながらリストを参照し、より一層懐かしく、
そして感慨を新たにした。学生時代に見た名画座でのオールナイト3本立てなども思い出す。
そして、あらためて、その凄い出演者の顔ぶれに、「国民映画」と呼ばれただけの価値を
再確認するのだ。いまだ、この映画に代わるものは出ていないし二度とありえないだろう。
目一杯笑わせながら、「日本人で良かった」と思わせるそれぞれの会話や寅さん一流の
セリフに、まさに気持ちが“やわらかーく”なるのだ。