あまり期待せずに観たら、予想を裏切る面白さだったという作品の典型だ。
舞台は60年代のアメリカ、バルチモア。太めでダンス狂のトレイシーは、親友のペニーと共に、C.C.ショーという参加型ダンステレビ番組に夢中。「あたしもあの番組に出たい!」という念願叶って出演を果たしたトレイシーは、ノリノリの技術で一躍人気者になる…という話。
主人公と意地悪娘、喜怒哀楽激しい登場人物、ノリのいい軽快な音楽。
ここまで聞くと、「あー、サクセス系のお気楽アメリカ映画なんだね」と思われるだろうが(実際私はそう思っていた)、親友のペニーが黒人の男前、シーウィード(しかしすごい名前)と恋に落ちた辺りから、趣が変わってくる。
実はこの時代のこの土地柄、黒人差別が色濃く残っている。白人と黒人の恋はおろか、同じ番組に一緒に出ることも難しく、交流など考えられないと公言している始末。だがトレイシーもペニーも、悲壮感などまるで漂わせず、「良いものは良い」という姿勢を貫き通し、やがてそれはバルチモアの大人たちをも巻き込み、“人種差別”の社会風刺へと発展していく。
今は日本でも個性の時代と言われているが、若干意味が取り違えられている中、本当の意味での個性とは、こういうことを言うんじゃないかと思う。あらゆる意味で時代の先端を行っている主人公が、髪型にも服装にも、そして人付き合いにも自分のスタンスを持つ様は、観ていてとても気持ちよく、オチもまた最高で、最後まで飽きる所なく楽しめた。
こういう作品があるから、アメリカ映画は奥が深いと思ってしまう。