アイルランドの神話を巧みに取り入れながら、
叙情性豊かに描かれた児童文学の傑作!
時間と空間を自由に往き来して人間の正体を明かす。
それは難しい理屈や哲学ではなく平易な言葉で、
二男二女の子と両親が暮らすリディ家の物語。
この作品を書いたケイト・トンプソンは、
イギリス生まれで現在はアイルランドに暮らし、
2005年に出版された「時間のない国で」では、
ガーディアン賞とウイットブレッド賞児童書部門、
ビスト最優秀児童図書賞を受賞してしまいます。
そして昨年発表された「プーカと最後の大王」は、
その「時間のない国で」の続編となっているのですが、
前作を知らなくても楽しく読めるようになっています。
まずはプロローグで過去に何があったかを知らせ、
その時点で詳しいことがわかっていなくても、
登場人物と一緒に解き明かしていく楽しさがある。
少しずつ明かされる壮大な時間の流れがまた面白くて、
おもわず次々に先を読みたくなってくるのです。
所々に挿入された絵もイマジネーションを助けます。
どこにでもある欠点だらけの家族のなかで、
次女のジェニーは特別変わった子として描かれます。
学校へ行くのがイヤで時間なんて気にしないし、
毎日はだしで野山を駆け回っているのが大好きなのです。
だけどその野山にある古い遺跡には幽霊がいて、
ある大切なものを守り続けているのですが・・・・
膨大な時の流れに忘れ去られそうな秘密があって、
人間を喰う恐ろしい怪物プーカと最後の大王と、
そして今目覚めたジェニーの闘い知恵比べが始まる。
母親が子どもたちに語って聞かせるような、
平易な言葉と言い回しで物語は進んでいきます。
ジェニーの家族は珍しい音楽一家ではあるけど、
おっちょこちょいの父親や冷静な長男の様子などは、
どこにでもあるちょっと懐かしい平凡な家族なのですが、
実はこの家族にも大きな秘密があって明かされていく。
家族が抱える秘密は遺跡の秘密と繋がっており、
最後にジェニーの目覚めと共に全体が見えるのです。
人間とは何かを知ってさらに好きにさせる本でした!