巨人軍関係の記事でよく目にするものの、そのお姿はもちろんのこと、
詳しい球歴や生涯、現況などについて詳細なレポートはほとんど見かけた
ことが一度もない。一体、どういう選手だったのだろう・・・?
本書はそんな伝説の選手3人に実際に直接取材した上でその生涯を丁寧に
再現、表題通り、彼らの「燃焼の瞬間」を見事に表現したルポであります。
解説者あるいは投手コーチとして晩年のお姿を拝見したことのある宮田氏は
別にして、大友投手そして藤尾捕手が直接語る「生の声」は昭和40年代
生まれの私にとってまさに伝説の再来以外の何ものでもありませんでした。
アンダースロー(実際は横手だったそうです)からくりだされる快速球を
武器に全盛期は30勝をマークしたこともある大友。軟式野球から転向した
経緯と硬球になれるまでの苦心談。稲尾投手に打たれたサヨナラ本塁打、
晩年をすごした近鉄での思い出、そして現在のお住まいに至るまで。実に
詳細な自叙伝に圧倒されます。
そしてもう一人。強肩強打の近代型捕手として南海相手の日本シリーズで
鮮烈なデビューを飾った藤尾。その後打撃を活かすべく外野手に転向した後の
微妙な歯車のズレから引退に至るまでの経緯。実業家として成功した現在に
おいても「不完全燃焼」の思いを打ち明ける純粋な人柄に魅了されてしまいます。
広岡達郎が語るライバル捕手=森のなんともいえないズル賢さ(?)を
さりげないスパイスとして用意するあたりは著者ならではのテクニックでしょうか。
川上、千葉、与那嶺、別所、王、長嶋。実績では彼ら「主人公」に遠く及ばず
ともその瞬間、彼らもまたまさしく主人公たりえた伝説の選手の足跡を胸に刻み
たいと思います。