なんとタイムリーな本だろう。
今年の後半戦で埼玉西武ライオンズが西鉄ライオンズ時代の復刻ユニフォームを着ることとなり、豊田泰光氏がその感激ぶりをしみじみと語る映像がテレビで流れた。西鉄ライオンズのことはリアルタイムでは知らないが、「三原マジック」「神様仏様稲尾様」など西鉄ライオンズの逸話は「伝説」として多くの人に知れ渡っているところだ。
本書では一流の野球人・選手の思想や技術を本人のインタビューなどを通して考察したものだ。おそらく雑誌の記事をまとめたのではないかと思うが(事実は不明)、スポーツ誌に載っていると目を引きそうなものが多い。それぞれがちょっと短いのが残念だが、登場人物のエッセンスはきちんと捉えられている。話の引き出し方のうまさはさすがは二宮氏だ。
登場するのは野村克也、中西太(稲尾和久)、土井正博、大野豊、仰木彬などかつての名選手・名指導者。そして、松坂(東尾修氏による)、清原、新井、渡辺俊介、山崎武司、工藤、古田など、旬の選手や人物である。後半では、プロ野球選手のメジャー流出やアメリカ野球(WBC、薬物、日米の野球経営の差)、裏金問題、高野連と特待生問題、独立リーグなどについて著者ならではの考察が述べられている。
圧倒的におもしろいのはインタビュー部分だ。自分のことに述べたところだけではなく、「名選手が見たほかの名選手」という視点は本当におもしろい。とくに野村氏(配球論・采配論)・中西氏(打撃論・稲尾氏のこと)・土井氏(打撃論)の奥行きの深さには感嘆するしかない。名監督だけでなく、名選手と言われた人たちがいかに頭が良いかを再認識させられる(こういったところでも、長嶋茂雄はやはり「何も考えていない」と言われる。やはり別格の天才なのか)。著書の多い野村氏はすでに広く知られている内容かもしれないが、多くの強打者を育てた中西氏の打撃論は人をうならせるものがある。野球をやっていて打撃を上達させたい人にも大いに参考になるだろう。
本書は野球の技術論やプロ野球論が好きな人にはたまらない1冊である。とくにオールドファンは懐かしさとともに、かつての名選手の凄みを再確認することができ、何度も読み返したくなるかもしれない。後半のやや凡庸なプロ野球論などは置いておいて(ただし、高野連批判はなかなか痛快)、前半のインタビューや選手論だけでもじゅうぶん楽しめ、読む価値があると思う。