本書のようなテーマには、巡業とハネ立ち出来る会場との比較、グッズを含めた興行・イベントや食事会などの収益と経費についての詳しいデータが不可欠であるにもかかわらず、数字は殆ど出てこない。
数字については、ケンドー=カシンこと石澤常光が、早稲田大学院で書いた論文を引用しているが、70Pほどの論文そのものをネットで読む方が、新日本(ユークス)とWWE、UFCの財務指標を比較するなど、より本書より読み応えがあるのではないか。
故三沢選手の死を含む怪我からライセンス制度、選手の引退環境作りへの取り組み、道場・トレーニング論、社長としてのお仕事、ビジネスとしての変化といった内容だが、取材については、全日本の武藤・カズ=ハヤシ、内田常務、ZERO1の笹崎レフェリー、プロレスライターの小佐野、林リングドクターらには直接取材をしているようだが、他は雑誌・書籍からの引用で、宝島社のムック等で裏情報が明るみに出ている今、『週プロ』を読んでいれば十分知りえる情報を書籍化した意味合いは薄いと言わざるを得ない。
著者はプロレス専門ライターではなく、プロレスのような隠し事の多いジャンルは、取材対象と人としての付き合いを深めた上で、書けない事情をどう書くかに苦心するのであり、その点から言えば、表に出ないデータ提供者と手を組まないと業界に切り込むような本は書けない、と再認識させてくれる本であった。