武道、華道、茶道など「道」と名の付く武芸や古典芸能では、師匠から学ぶプロセスとして「守・破・離」という手法が使われて来た。「守」は師匠の教えを守って基本の型を習得する段階、そして「破」で型を破って自分なりの発展を試み、「離」で自分なりの独自の型を作り出す。
本書で説かれているのも、上記の「守・破・離」のプロセス。まずは、師匠を見つけ、すべてを受け入れる覚悟をし、できるだけそのまま真似をしてみることが重要。そして、修行を重ねる中で、「師匠のすごさを生み出しているのはこういう考え方(方法論)ではないか」というヒントを掴み、検証し考えを深め、自分なりの新しい考え方や方法を生み出す。
著者がビジネススクールの運営に関わって、社会人学生で学習を通して「変わる人」と「変わらない人」がいることに気付いた。「変わらない人」は、良い意味でも悪い意味でも、やや冷えた目で見ながら勉強を要領良くこなそうとする。そして、プライドが高いだけに自分の考え方とは違う価値観や優れたものを受け入れようとはしない。一方、「変わる人」は、「これは違う」、「自分ならこうしない」と思うことでも、一旦飲み込んで咀嚼しようとする。自分より優れた能力の存在を認め、争おうとはせず、そこから学ぶ懐の深さを持っている。
学ぶということは、本質的に「自分を変える」こと。自分を変えるということは、今のやり方や考え方を一旦手放す、アンラーンする、「負ける」という謙虚さが重要。自分を高みに持ち上げる為には、大きなパワーが必要で、その為に「プロ」の力を借り、「プロ」のやり方を真似、役を演じることで、仕事の型を覚え、深めることで、新たな自分なりのやり方を見出して行く。
会社の業種や規模、事業環境の変化により、現実の仕事の種類や難易度は異なっている。但し、仕事を行っていく上での基本的な共通言語や考え方というのは存在する。それを「師匠」と考え、基本的な型やフレームワークなどを身に付け、さらに発展させ、複雑な現実世界の仕事に自分なりのやり方で応用、昇華させていく。
本書はその様な学びの姿勢について、著者の経験から絞り出されたエッセンスなのだろうと思う。豊富なビジネス上の知識や情報も多く、平易な語り口で、社会に入って間もない方々にも有益な著作だと思う。