エフゲニー・キーシンによる2008年ライヴ録音によるプロコフィエフの協奏曲集。最近協奏曲でパートナーを務めているC.デイヴィスではなく、アシュケナージ指揮フィルハーモニア管弦楽団というチョイスは曲目を考えると順当と言えるだろう。アシュケナージのEMIへの指揮者としての録音も久しぶりである。
プロコフィエフのピアノ協奏曲の中でももっとも内容豊かな2曲が選ばれており、聴き応えのある演奏になっている。キーシンのタッチは輝かしくそれでいて重量感豊かであるが、全体的にシックで落ち着きのある音色が支配する。それでいて、聴かせどころでの求心力は研ぎ澄まされた刃の様な一陣の疾風となる。キーシン自身2度目の録音となる第3番でも、今回の方が大きく豊かな音楽性を感じさせる。
両曲とも序盤はやや表情をセーヴし、終楽章に向けて感情の放出が行われる。この方向性に従って、独奏者、オーケストラ間で呼吸が合わされており、そのため両終楽章は比類ない迫力に満ちている。
アシュケナージの指揮も、セーヴとグロテスクの配分が巧みで、さすがにプロコフィエフという作曲家をピアニストとしても指揮者としてもよく知っていると思わせる。全体的に落ち着いた色合いの演奏に仕上がっていて、かつてアシュケナージがピアノを弾き、プレヴィンが指揮をした色鮮やかな快演とはまたちがったニュアンスの存在感のある演奏だ。個人的にはアシュケナージがピアノを弾いた華やかな演奏の方が好みだが、このキーシンのものも、それとはまた別の価値軸で「聴けてよかった」と思わせてくれる演奏だった。