まず時代設定がうまい。マジックが魔術だった時代。経済的な発展をもたらしても、科学は万能とは言えず、何となくあいまいで不完全な19世紀末。
オープニングも秀逸。いきなり主人公が殺人現場に出くわし、法廷で裁かれる場面から始まる。そこからラストに至るまで、一時も緊張がゆるむことなく物語は進行してゆく。
もう映画全編にありとあらゆる伏線が仕込まれている。「これがヒントかも…」「あれがそうだったのか!」の連続。クライマックスから種明かしまで、まるで一流のマジックを見ているかのようにドキドキさせられる。よく練られた脚本は、奇想天外な原作のアイディアを見事に引き立てている。
だが本作のテーマは、そんなミステリアスな時代性でも、観客の意表を突くどんでん返しの連続技でもない。
競争心が生む確執、人の目を曇らせる嫉妬心、栄光を手にする恍惚感、何もかも犠牲にする悲しいまでの執着心。それら人間の業が、男たちを破滅へと導いてゆく。クロスオーバーなジャンル映画でありながら、普遍的な神話のような人間の悲劇。エンターテイメントでありながら、今どきにはない骨太な物語である。
主人公を演じる二人もすばらしいが、脇役たちも新旧の名優揃い。最初に犠牲となる美しい妻役のパイパー・ペラーボに注目。