歌手というより作曲家として有名なマット・デニスのピアノ・トリオでの弾き語り録音。ホーム・グラウンドであったハリウッドのクラブTally-Hoでの1953年のライヴ盤で、デビュー作でもあります。2002年の紙ジャケ盤はオリジナル・ジャケで復刻されていましたが、このジャケは知名度が高い再発盤のジャケです。
白人のヴォーカルというと感情を込めて叙情的に歌い上げるものが多いですが、マット・デニスはさらりと非常に軽く歌っていて、それがとても気持ちいいです。テンポを変えたりおどけてみたり、そんな自由自在で表情豊かなヴォーカルを披露できるのは作曲者ならではの強みでしょうし、そうした自由なヴォーカルにピアノが追随するのも弾き語りならでは、ですね。2曲で妻でもあるヴォーカリストVirginia Maxeyが参加して華を添えてますが、二人の掛け合いがまた素晴らしく楽しいです。ホーム・グラウンドらしく観客とのやり取りも温かく、ほのぼのした気持ちで聴くことが出来ます。
このアルバムで不満なのは収録時間が32分と短いこと。歌う前に「T-66,take 2」などと言っているところから、ライヴ盤を作るためにたくさん録音してベスト・テイクを編集したのがこのアルバムでしょう。なんとか未発表テイクを発掘して付け加えて欲しいものですね。あと音質がイマイチなことも気になりますが、やむを得ないのでしょうか?
個人的には20年近く前にクラブのジャズ・マニアの先輩に教えてもらって未だに愛聴している、飽きのこない思い入れのある作品です。ちなみに同じクラブでのライヴ録音である"Dennis Anyone ?"も名盤です。また余談ですがピアノの弾き語りをお好きな方にはオスカー・ピーターソンの「ロマンス」も知名度が低い作品ですがお勧めですよ。