3年ぶりのクライトンの新作で、一気に読んでしまいました。「タイムライン」は、量子変換によるタイムマシーンものであり、現実味が薄かったのですが、本作品ではナノテクノロジーを扱っており、ナノテク最先端を行く日本に住むわれわれにとっては、単なるSFとして片づけられないものがあります。一言でいえば軍事的目的で開発されたナノ粒子の群れによる自走性(自飛行性?)カメラが暴走し、人間の手に負えなくなるという内容なのですが、多少の無理に目をつむれば、理論的背景を含め十分楽しめる内容です。特に、日常生活から始まるゆっくりとした展開の前半から、がらりと変わった早い展開の後半の好対照は読者を引きつけるものがあります。もちろん「ジュラシック・パーク」同様、クライトンは科学!の進歩に対する警告も発しています。たとえば、主人公のジャックとソフトウエア責任者のリッキーとの、大腸菌の使用に対してかわす会話、「・・・人間の体内でも生きられるセルを使うことには問題があるんじゃないのか?・・・」「・・・業界標準を選んだってことだよ」。そして最後に、「連中は、自分のしていることがまるでわかっていなかったんだ・・・」と。