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プルースト 読書の喜び 私の好きな名場面
 
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プルースト 読書の喜び 私の好きな名場面 [単行本]

保苅 瑞穂
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
価格: ¥ 3,045 通常配送無料 詳細
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商品の説明

内容説明

『失われた時を求めて』は、〈テクストの快楽〉にみちた小説でもある。〈紅茶とマドレーヌ〉などの名場面に光をあて、作品と人間の真実をエセー風に描く思索の書。

内容(「BOOK」データベースより)

20世紀最大の小説『失われた時を求めて』は、比類ない“読書の快楽”に彩られた文学作品でもある。有名な“紅茶とマドレーヌ”、“海と娘と薔薇”、“祖母の死”、“心情の間歇”など、圧倒的な感銘をよぶ名場面を読み解き、その魅力をエセー風に描き出す。

登録情報

  • 単行本: 298ページ
  • 出版社: 筑摩書房 (2010/12/9)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4480838120
  • ISBN-13: 978-4480838124
  • 発売日: 2010/12/9
  • 商品の寸法: 19 x 13.4 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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By スワン トップ500レビュアー
サブタイトルにあるとおり、『失われた時を求めて』のなかで、著者が愛好する名場面を読み解いた本である。

あまりにも有名な「マドレーヌ菓子」のくだり、架空の大作曲家の「ソナタ」をめぐる愛の物語、海辺での「花咲く乙女たち」との出会い、最愛の祖母の甦りを描いた「心情の間歇」の一挿話、そして「見出された時」における大団円……など、よく知られたエピソードを丁寧に読み込んでいく。

本書を通読すれば、『失われた時』がいったいどういう小説であるのか、おおよそのところがわかる仕掛けにもなっている。
そのかぎりでは、絶好の<プルースト入門篇>と呼んでもいいし、恰好の<『失われた時』へのいざない>と評してもいいだろう。

……とはいえ、名著『プルースト・印象と隠喩』(ちくま学芸文庫)で、プルーストの小説の構造を看破した著者の手になる書だけあって、とおり一遍の解説では終わらない。

著者自身、《原文を訳しながら、ゆっくり読んでいくと、これまで読み落としていた細部の真実に気づくことがしばしばある》といった趣旨のことを書いているが、じっさい、われわれが読み過ごしてしまいがちな<細部の真実>がつぎつぎに指摘される。
一、二例を引いておく。

・プチット・マドレーヌを口にした語り手が、一挙に過去を想起する「無意志的記憶」を記したくだりでは、半過去、現在形、単純過去といった時制が巧みに操られていること。

・ピアノの印象を表現するとき、プルーストは「聴く」ではなく、「見る」という動詞を使い、《言葉のあいだから音楽が聞こえて来る》ような印象を与えること。

・奔放な「花咲く乙女たち」の出現を語るに際して、あまり気づかれることがないけれど、プルーストは彼女たちの少女時代の風貌に触れている。さらにいえば、彼女たちがやがて彼女らの母親のように容貌が衰えるであろうことまで告げられている。少女〜若い娘〜母という<時間>の経過(小説のテーマのひとつ)が、すでにここで予告されていること。

・その「花咲く乙女たち」との出会いに触れて著者(保苅氏)はこんな感想を洩らしている。
《どこかで若い娘たちの一団に出会うということは……だれもが普通に経験する日常の出来事である。しかし、その日常の一瞬の経験のなかに、これだけ多彩で、微妙な美の感覚が隠されていることを教えてくれる作家が、……プルーストのほかにいるだろうか》

プルーストの行文をじっくり読み込みながら、著者は、プルーストの小説の核心(あるいは秘密)に迫ってゆく。
芳醇な日本酒を味わうような、ぜいたくな趣きのある本だ。
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マルセル・プルーストを鍾愛する保苅瑞穂の手になる『プルースト 読書の喜び――私の好きな名場面』(保苅瑞穂著、筑摩書房)では、『失われた時を求めて』の魅力が存分に描き出されている。

「主人公は恋愛や社交界での付き合いを重ねるなかで、ますます真の幸福から離れて行く。かれがそれを'むためには、年老いて、死が近づいて来るのを感じながら、最後にそれが自分にとっての真実だと確信できたもの、つまり無意識の記憶の真実を小説に描くことを決意する」に至る時の経過が必要だったのである。この意味で、この作品は恋愛小説であり、風俗小説であり、社交界小説であり、かつビルドゥングスロマン(教養小説)でもあるのだ。

「われわれは小説を読みすすんで行くうちに、この娘たち(いわゆる、花咲く乙女たち)だけでなく、小説に登場するほとんどすべての人物が時間を通して描かれていたことに気づかされる。その変化の最後にやって来るのが老いであり、死である以上、プルーストが小説の最後に、死の舞踏と呼んでもいい場面を用意して、登場人物たちの変わり果てた姿を描くことになるのは、小説の構想として自然なことである」という著者の指摘は、さすがである。

「長い小説の最後を飾るのは、ゲルマント大公夫妻の邸宅で催されるマチネ(午後の集い)の場面である。その場面でわれわれ読者は主人公とともに、小説がはじまってから、少なくとも半世紀に近い年月が流れたあとで、まだ生き残っている登場人物の変わり果てた老残の姿と再会することになる。目に見えない時間というものの実体をその姿に託して、目に見えるように描こうとした作者の意図がそこにあることはいうまでもない。それにしても、このマチネでの一連の場面はすごい」。「しかし、この一節でプルーストが描こうとしているのは、単に目に見えない時間の推移だけではなかった。それは、その時間の推移が人間にもたらす、避けようがない境遇の変転であり、零落の哀れさである。地上のいかなる栄華も、人間のいかなる驕りも、変化を免れることはできないという無常観」を、プルーストは示したかったのである。そして、「人間が一方では時間によって肉体を蝕まれながら、しかし他方では、その時間を記憶として内部に持つことによって、人間の精神がいかに大きな、深い存在になりうるか」というプルーストの到達点が、私たち読者に救いを与えてくれるのだ。
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