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38 人中、34人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
文字文化によって受け取った「考える時間」をどうするのか?,
By イソップ (http://blogs.yahoo.co.jp/isop18) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか? (ハードカバー)
さて、どんな本かと読み始めたら、これが面白い。まるで秀逸な、推理小説を読むような謎解きによって、 人間にとって読書することが、いかに特別なことかを、 歴史的検証と、科学的確認によって進めていきます。 本来この本は、ディスレクシア(読字障害)の研究で、 なぜこうした障害が起きるのかを解明するものでした。 ディスレクシアに関しては、最近日本でも問題になり、 子どもの学習障害として、認識されてきているようです。 ところが調べてみると、大きな成果を残した偉人たちが、 実はこの読字障害だったことが次々に判明してきます。 そして最新の脳科学が、読字文化の構造を明らかにして、 その成果としてわかってきたことを、順序立てて紹介し、 最先端の成果を、案内してくれる本だったのです。 生来人間の遺伝子に、特定の読字を担当するものはない。 それなのになぜ読字が可能になるのかは、教育によります。 もちろんこの教育とは、学校教育以前の子育てにあって、 視覚と聴覚をフルに使いながら、パターン化を繰り返し、 新しいニューロンを育てると同時に、古いニューロンも、 再編再利用しながら、新しい役割をもたせていくのです。 その結果、読字には複雑な工程が伴ってくるのですが、 これを高速化する働きが左脳にあって、全体を管理します。 ところが、人によっては右脳など別の場所を使うので、 高速化がうまく行かず、読字行為に困難が生じるのです。 だけどこの障害は、ニューロン再編成の個性でもあるので、 かならずしも悪いものではなく、むしろ別の才能を伺わせる。 育児教育第一人者としての著者は、この研究成果から、 読字障害を持つ子供には、普通とは違う教育指導が必要で、 これを理解し指導すれば、社会に有益な人が育つと言います。 さらに著者は、ソクラテスが文章化を嫌ったことを例に挙げ、 文字文章が、話し言葉の思考を失う可能性があったとも言及します。 よく言われるところの「文章は死語」であることを認めた上で、 書く行為が書き手の深い自己との向き合いがある場合にのみ、 読者は時間を超えて、その自己と向き合うことが出来る! これが人間にとって、文章化の大きな成果だったと言うのです。 僕らは膨大な情報を瞬時に受け取る、新しい情報社会を迎え、 文字文化によって受け取った「考える時間」をどうするのか? さらに新しい脳細胞の再編成によって、どんな能力が得られ、 それによって失うものが何かを、考える必要があることを、 著者は最後に、懸命に訴えているように思われました。
22 人中、19人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「読む」という行為が脳に与える影響を描き、文明変革まで見通す希有な名著!,
By
レビュー対象商品: プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか? (ハードカバー)
へんてこな題名の本書は一言でいえば「読む」という行為に関する本だ。読書論は、自足しきったジジイの夜郎自大な書斎談義になったり、「最近の若者は本を読まない」的な文化人の愚痴でしかなかったりする。でも本書はそんなのとはまったく異なる、本がいかに人間を変えたかを縦横に描き出した、コンパクトながら実に壮大な本だ。大人はごく自然に物を読む。だから読書というのを、単に透明な情報獲得手段として考えてしまいがちだ。だが実際には、それは多大な苦労を経て習得された技能だ。その過程で脳は歴史的にも大きな変化を強いられ、比喩ではなく「読書脳」となる。その読書脳が多くの人に共有されたことで、逆に人間の文化と文明も大きく規定されたのだ。 本書はその有様を進化学、脳科学、言語学、文学、教育学などを自由自在に使って説明する。物を読むときの脳の働きは分析が進んでいる。英語と日本語での脳の働きの差や、古代人の脳や子供の言語習得の解説はきわめて刺激的。読むことで脳は他の視点と時間の中で深く思考できるようになる! そうした読む喜びを描き出す一方で、本書は読む悲しみをも示す。その例が失読症の人々だ。エジソンやピカソなど多くの失読症者は、別の才能を高度に発達させていることが多い。人々は、読む能力と引き替えにそうした才能を失ってしまったのだ。 そしていま、ネットで人々の情報環境は変わりつつある。ネット等は、従来の読む行為を破壊する可能性もある。その不安を著者は率直に述べる。だがそれをさらに深める可能性も持っているのだ。本書はこの両方の可能性をわかりやすく描き出す。そして最後には、人類が文章を超越する可能性にまで思いをはせる…… すごい。読むうちに本書は様々に様相を変え、あなたは予想外のことに思いを馳せているはずだ。そしてそれでいいのだ、と本書は語る。「読書の目標は、(中略)最終的には書かれた文章と無関係な思考に到達するところにあるのだ」から。本書で是非ともそれを体験されんことを! それは今後のあなたの読書そのものに、一段と深みを与えるだろう。
14 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
文章を読む時、脳内部では何が起こっているのかを解説,
By 松下重悳 (東京都八王子市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか? (ハードカバー)
星の数には注釈が必要である。文字文化と脳科学の関係を専門的に学びたい人には、5つ星の教科書・参考書であろう。この翻訳困難な本をよくぞここまでうまく翻訳したと、英語と専門分野に通じているに違いない翻訳者を称えたいので、日本語で勉強したい人にとっては福音であろう。専門家になる気は無くて、文章を読む時の脳の働きや読字障害などの一般常識を深めたい私のような読者にとっては、本書は読んで理解できる明解さに欠け、3つ星の評価である。平均して4つ星としよう。単純明快でない理由は多分、(1)脳科学の複雑さと、(2)原本の親切心不足にあって、(3)翻訳者の罪ではなかろうと感じた。 本書は3部作で、(1)文字文化の発生と発達、(2)子供が文章を読めるようになる過程、(3)読字障害、をそれぞれ脳科学から解説している。 私が学んだ点の幾つかを列挙すれば、(a)聴覚などとは異なり、読字能力は天賦のものではなく、個々人の学習により脳の天賦の機能が連結され転用されて実現するものであること、(b)文字は絵文字→表意文字→音節文字→音素文字のように進化し、脳も同時に進化してきたこと、特にエジプトの象形文字を含む多くの古代言語で漢字かな混じり文のように表音文字+音節文字の形が広く用いられた歴史があり、日本語の漢字かな混じり文が必ずしも特殊な歴史の悪戯ではないこと、(c)英語と中国語では読字に用いる脳機能は異なり、日本語は中間的であること、(d)読字能力の育成取得には、幼児期の文字文化環境が深く関係していること、(e)読字障害の原因は多種多様。しかし読字障害の人は総じて右脳機能が発達し、Edison, da Vinci, Einsteinのような偉人も輩出していること、などを興味深く理解した。
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