プルトニウムについて、恐怖を煽るでもなく、擁護するでもなく、淡々と事実のみを記述した本です。結局、プルトニムはどの程度、危険なのかについては、答えを得る事はできません。
実際、プルトニウムの危険性についての調査・研究があまり成されていないので、明確な事は言えないというのは確かなのですが、物足りないものを感じるのも確かです。
ただ、事実のみを知りたいという向きには、よい本かと思います。それでも1995年出版の本なので古さは否めません。著者は大学で原子力工学を学んだ、朝日新聞記者です。
初めて原子の変換に成功したラザフォードの話から始まり、核分裂についての物理学の基礎も絡めながら、原爆製造の歴史が語られます。またドイツ、日本のそれぞれの大戦中の原爆研究についても述べられています。
大戦後の、核保有国となるための各国の駆け引き、そして平和利用の名の下に、プルトニウムを日本が輸入した経緯や、IAEAとはそもそもどういう組織なのかが書かれています。
プルトニウムの人体への影響については、3つの事例が紹介されています。ロスアラモス国立研究所での人体実験、この結果から、プルトニウムの生物学的半減期が、118年とされました。
次が、マンハッタン計画での吸入事故で、1990年時点で、26人中4人が癌になったそうです。最後に、ロッキーフラッツのプルトニウム工場での火災事故の調査で、9年後の追跡調査では、肺ガンを発生した人は居なかったそうです。
研究者によると、プルトニウムを27マイクログラム吸入すると、100%、肺ガンになるそうです。量としては、直径0.1ミリ強の球体になります。
本書を読むと、まさに原子炉というのが、原爆を手にする為の道具であり、付け足しで、発電も出来ますよ、というものに過ぎず、各国政府もそう認識してきた事が分かります。平和利用とか温暖化対策などの甘言に騙され、「安全です」と言われながら犠牲になるのは、いつも末端の国民なのです。