パッケージや公開時の宣伝で予想されたような、天才たちの究極対決を過剰に描いたシンプルかつストレートな馬鹿力焼肉バトル映画・・・ではまったくない。商品の説明にある通り本筋はまったりした焼肉店人情話・兄弟話である。そういう方向自体はありとして、余計な演出とのミスマッチが激しすぎて大失敗している。焼肉を題材としながら熱気のなさが尋常ではない。
宿敵が天才料理人なのだから素直に料理対決で全国制覇とすればいいものを金と暴力で二昔前の地上げ屋みたいなことをしている。この場面における田口トモロヲの立ち回りはギャグとおぼしいが見ていて不快なだけでしかない。「ギャグのつもりで空回り」は随所に見られることで、特にテレビ番組では津川雅彦ほか審査員や前田愛演じるアシスタントなどの自己主張がことごとく滑っている。そんな流れで生き別れの兄弟が云々とやるのが邪魔なだけ。そもそも全体にシリアスとコミカルをわきまえない演出で居心地悪い場面が多すぎる。後半のドタバタが丸ごと要らないなど無駄も多い。主人公の成長はなし崩しでそもそも成長なのかも疑わしく、その上終盤は(呆れたことに)バトルが成立しておらずフラストレーションが溜まるばかり。なにより致命的なことに焼肉がまるで美味しそうに見えない。
良かった点としては、主人公の師匠役の田村高廣はさすがの貫禄で、ほとんどしゃべらず動かずに伝説の達人を感じさせる(しかしこれが遺作となったのはどうなのか)。山田優は強く明るく健康的なのに色っぽく、妙に生々しい。伸びやかな肢体を見てるだけで楽しい。宿敵のアシスタントになる矢沢心も少ない出番ながらいいキャラを見せていた。松田龍平はいつも通り普通の気さくなあんちゃんで好感が持てる。
とはいえやはり映画としては「見てはいけない」レベル。山田優と田村高廣に星一つ。