ジャンルで分けますとガイドブックになるのでしょうが、これだけの美しい写真と素敵な文章で綴られているわけですから、旅のお供は当然として、上質の読み物として評価できる内容でした。
チェコのプラハの人気は凄まじいものがあります。行きたい観光地のトップに挙げられるのに、テレビ等でさほど取り上げられないこともあり、その秘められた魅力に迫ろうとするとどうしても本に頼ることになるのですが、これと出会えたことは嬉しかったですね。
いきなり見開きの真夏の旧市街広場を足早に通り過ぎる女性のシルエットと中世の建物と石畳がこの街の魅力を1枚の写真で表していました。上手いですね。
6ページには「宝石のようなプラハの町へ」という短い文が秀逸でした。「この美しい町は奇跡ではない。プラハ市民が命をかけて 守ってきたものだ。」と締めくくられています。この町の歴史を凝縮した文でした。
有名なカルレ橋の魅力は至る所で語られています。ボヘミアの歴史を刻む重厚な大聖堂である聖ヴィート大聖堂の内部の重厚さと神々しさは写真から如実に伝わってくるでしょう。
貴族たちが住んだ町のマラー・ストラナの美しい屋根の景色が写し取られていますが、何気ない光景が絵になる街です。
見開き2ページで紹介してあるチェコが生んだ芸術家たちのコラムも参考になりました。特に母国の偉大な芸術家として慕われているドヴォジャーク(こう呼ばれるのですね)やアルフォンス・ムハ(ミュシャ)の生涯と功績を短い文章の中にまとめてあり、知っているような伝記をかいつまんで理解できるように工夫がされていました。72ページの見開きのムハのフレスコ画「スラヴの調和」は愛国心がみなぎっています。
キュビスム建築散歩としてまとめられた10数ページもよい内容ですね。分かりやすくその特徴を捉えた編集だったと思います。
ビアホールへ行こう!やプラハで見つけた!チェコみやげなどはガイドブックらしいコラムでした。
プラハの紹介の第1人者と目している旅行作家でグリム童話研究家の沖島 博美さんの文が本書の質を高めているのは間違いないです。確かさと文化への造詣の深さがどの箇所からも感じ取れました。
また土屋 明さんの写真がいいですね。日経新聞広告賞ほか多数の受賞歴を持つ写真家のようですが、この構図で撮りたいという明確な意図と表現が伝わってくるもので、プラハの写真集として役割も果たしていました。
プラハという街の魅力と執筆者と写真家が三位一体となった魅力あふれる「ガイドブック」と言えるでしょう。