年齢、性別でレビューもさまざまですね。1968年は世界中でいろんなことがありました。ベトナム戦争と反戦運動、中国の文化革命、大学紛争、パリの5月革命、そして、「プラハの春」。ニュースで聞いた「ドプチェク、スポポダ」という民衆の声が耳に残っています。出版時、読もうかと思いながら見送りました。最近、息子に面白いと奨められ遅ればせながら読みました。私の世代はリアルタイムである程度の知識を持っています。当時、22歳でした。この事件で社会主義に対する幻想が完全に消えました。しかし、詳細は知らなかった。軍事介入により「プラハの春」はあっけなく押しつぶされた。私の興味は、現地ですべてを体感した日本人外交官が書いた「歴史の証人」としての記述にありました。書ける部分と出版時まだ現職の外交官という点を考慮すると書けない部分があるのは十分理解できた。それでも、プラハの春にいたるプロセス、軍事介入に至るプロセスの記述はリアリティに溢れてます。「神は細部に宿る」と言う言葉通り、ながくプラハで生活した人しか書けないような細部に渡る描写が素晴らしい。また、ノンフィクションではなく、ラブロマンス小説というストーリーのなかで、外交官として得た情報を書いたことが作品として成功し、より多くの読者を獲得したのでしょう。私の世代は若いころの五木寛之の小説を読んでいるような気持ちになりました。どこまでがフィクションなのかも興味ありますが、カテリーナと若き日本人外交官の恋は美しく哀しく、60年代的と感じました。厳しい状況下であっても、未来はある、という「希望」のもてる
時代だったと思います。これまでレビューを書かれた方はみなさん若い人が多いように思いますが、是非、若い人たちにこの「歴史の証人」の本を読んで欲しい。「権力の集中はやがて腐敗し、悪となる」「共産主義もファシズムと変わらない」など説得力があります。