前半ではスペイン美術史を追いながら、エル・グレコ、ベラスケス、ゴヤの三巨匠に焦点を当てている。それぞれの画家としての歩みや代表作はもちろんだが、当時の美術への思想、宮廷についてもふれることでその作品が生まれた背景についてわかりやすく解説してある。
宗教画というカテゴリー、リアリスムというスペインの伝統、ルネッサンスが波及した影響、そして宮廷という特殊な世界を見ることで、スペイン美術の発展を垣間見ることができた。
後半は、そのスペイン美術史の延長上にある現代美術について。まずはバルセロナの生んだ天才ガウディ。建築家ではあるが、カタルーニャという土地と伝統が生み出した鬼才と呼べるだろう。
そしてピカソとミロ。二十世紀を代表するこの二人の巨匠もまた、スペインという土地で生まれた天才だった。それぞれに異なる世界を作り出した巨匠たちが、スペインという土地にどのように結び付けられていたのかが興味深い。
この本は雑誌などに載せたエッセイを集めて出版されたものだけど、内容にまとまりがあって全体を通じるテーマがはっきりしている。そして文章も、専門的過ぎないのでわかりやすい。美術館でただ見るだけではなく、もうちょっと深く知りたいという素人に最適の本だった。