本書はインテルを研究したガワー・アナベルの博士論文をベースにまとめられている.原書は2002年に出版されている.彼女はクスマノの審査の元,博士号をMIT(マサチューセッツ工科大学)スローン経営大学院から2000年1月に取得し、スタンフォード大学からはインダストリアル・エンジニアリングおよびエンジニアリング・マネジメントの修士号を取得している.元々は技術者およびプロジェクト・マネージャとしてヨーロッパにある大手通信機器メーカーに勤務していた.
従って本書の内容の約6割がインテルのケースに割かれている.
インテルのプラットフォーム形成は他の事例であるマイクロソフト,シスコとは異なり,半導体産業のいちプレーヤーでしかなかった.つまり,戦略の周到性・綿密無くしては成長はあり得なかったと言うこと.
IBM製PCの全盛期,デファクトはMS-DOS と ISA バス(周辺器接続バス・アーキテクチャ)であり,ボトルネックは後者であった.インテルはバス・アーキテクチャの刷新に留まらず(ここで儲ける気はなかった),PCの拡販を目指した事業戦略を立案する.この戦略は成功し,PCIバス・アーキテクチャのデファクト化を果たした以降,AGP や USB 規格の開発に繋がる.
結論として,プラットフォームリーダーは複数の役割バランスを取る必要があり,そこには一企業の独占的利己を排他した「公共の利益」が追求され,最終的なビジネスの成功はそこから導かれるとも考えられる.外部パートナーに一定レベルの中立性を伝え,産業全体の利益のために活動した結果が,不動の価値(勝ち)組の地位を得た現在のインテルとも言える.収益構造一辺倒の企業戦略に対して,「公共の利益」に対して再認識を促す書籍,なかなかおもしろいですよ...