「ルーゴン家の誕生」を読んだら、次はこの本を。
プラッサンで、商人フランソワ・ムーレは、妻マルトと2人の子供たち(それぞれ後に主人公となるオクターヴとセルジュ・ムーレ)と、穏やかな引退生活を営んでいる。
家賃収入を稼ごうというちょっとした欲から、3階に下宿人を入れることを決める。
それがフォージャ神父とその老母であった。到着した時から、けわしく不動の存在感と不気味な黒い影を感じさせる二人。
その後はもう、一流のサイコスリラーのように物語が展開していく。
何気ない、町人たちの会話や、台所での女中達のやり取り。サロンのマダム達のさざめき、かび臭い地方の小教会で静に捧げられる祈り。そんな日常の中で、それまでは普通の主婦だったルーゴン家のマルトを思いのままに操りながら、フォージャの秘めたる怪物性が徐々に小都会・プラッサンを侵食していく。
じわじわと侵略されていく、隣人もの、家もののサスペンス。
夫ムーレはどうなるのか・・・
それとともにフォージャ神父の巧みな策略は、なんとパリの政治、王党派vs帝政派の政治闘争にもつながっていたことが発覚する。
「プラッサンの征服」
ゾラのタイトルの中でも、一見、それほどスキャンダラスな内容を感じさせない、穏やかな始まりであり中盤であるはずの本書。
それにもかかわらず物語はルーゴン・マッカール叢書の中でも、もっとも恐ろしい光景の一つで、大団円を迎える。一家の母祖であるアデレード・フックの狂気を受け継ぐルーゴン・マッカールの呪われた血が再び流され、その上に勢力を伸ばす一族が雑草のように繁茂する。