近未来SFというスタイルの本作は、一応殺人も起きるのだが、それはあくまでも主テーマではない。
したがって、本作はミステリという体裁のものではない。
本作のテーマは「個人情報の利用」であり、さらには著者の他の作品でも描かれている「人の脳の不思議」ということである。
あいかわらず、著者の作品は圧倒的なリーダビリティだ。
だから、読んでいる途中は非常に面白い。
一気呵成に読める、まさに徹夜本といえるスピーディでサスペンスフルな作品である。
とにかく、先が気になって、というストーリーはさすがだ。
しかし、この結末には疑問がある。
明示されていない細かいことが、結構ある。
もっとじっくりと、密度の高い書き込みがされても良かった。
特に「脳機能の不可思議さ」ということについては、かなりあっさりと流されてしまった感がある。
これは実に残念であり、本書の最大のマイナスポイントである。
本作は映画化されるようだが、現実と非現実の境界というか区別の表現がどうなるのか、楽しみでもある。
へたに作ると凡作になるし、的確な役者を配してほしいと思う。
特に彼女には。