テーマをあえて表題に選ぶのは著者としては、勇気のいることではないでしょうか。でも、そのストレートな表現がにくいほどの演出になってしまうのが、本作の魅力。「なんだ、女同士の嫉妬かなにかの話でしょ」などとタカをくくっているとやけどします。
富・美・才能すべてを生まれながらに持っている女性、史緒。
一方、だらしのない実母を殺したいほど憎みながら、オペラの世界で這い上がろうとする苦学生、萌。
一昔前なら当然、萌が主役で、貧しさのハンデを手を汚さずに乗り越えていく物語が展開し読者の共感を呼んだことでしょう。
一条ゆかりはそんな読者の思惑を打ち砕き、史緒から富を奪うことで、史緒を萌と同じ土俵に放り込みます。ここから物語がスタートするのです。
苦労をも歌の表現力として実らせ、成功のためには手段を選ばない萌。
突然一人で世間に放り出され、仕事をこなして報酬を得ることさえ知らない自分自身が、どんなに非力かを初めて知る史緒。
より大きな成功のためには手段を選ばず、良心も持たない。そんな「安っぽいプライドは捨てた」萌。
今まで自分が誇ってきたことが次々と崩壊し、自分の守ってきたプライドが実力に合わない安っぽい見栄に過ぎないと悟る史緒。
二人の行き方を通して、本当のプライドとは、プロとは・・・を考えさせられる力作です。女子供の本と馬鹿にせず、プロの心構えを知るために、新人研修に使えるかも・・・・とさえ思いました。