ソ連研究の専門家としてブッシュ(父)政権において国家安全保障会議に加わり、ブッシュ(子)政権においては国家安全保障担当大統領補佐官を、そして国務長官を務めたコンドリーザ・ライスの物語。冷戦終焉時と9.11事件以後という二つの激動期に政権中枢にて要職を務めあげたコンディの人間形成の過程を様々な資料・インタビューを通してヴィヴィッドに描き出す。
1960年代のアラバマ州バーミングハム。公民権運動史において、人種問題において最も保守的で激しいバックラッシュが展開されたこの都市でコンディは生まれ育った。白人プランテーション所有者と黒人奴隷を先祖に持ち、ジムクロウ時代の激しい黒人差別の時代を生き抜いてきたこの家系は代々教育を重視してきた。白人は黒人が劣等であると認識しており、劣等であることを望んでおり、そうした固定観念を打破するためには白人よりも圧倒的に秀でていなければならない。そのようなライス家代々の生き残り戦略のもと、コンディは白人よりも三倍優れた子になることを期待されて育ってきたのである。
人に歴史あり。本書で描かれる政権中枢における彼女の役割が興味深いのはもちろんだが、彼女がどのように知的形成を遂げてきたのか、コンディが国務長官に昇りつめていく過程はアメリカ史における黒人の社会的上昇戦略の極端だが典型的だとも言える一つの例だろう。非常に興味深い一冊であった。