ブータンは、GNP(国民総生産)ではなく、GNH(国民総幸福)を国王が提唱している。
ブータン関係の本は多いが、コンパクトにこの理念を解説したという点で、
ある程度評価できる本だと思う。
ブータンの方針をどうとらえるかは、人さまざまだろう。
ブータンも当然、経済発展は心がけている。しかし仏教国として、
経済発展が国としての究極の目的ではない――というのがこの国の理念だ。
いわば、人生の充足感を得られるかどうか、ということだ。
チベット仏教研究者として、長くこの国と関わってきた著者が、
信仰に生きる人々の暮らしや国王の施策などをつづる好著だ。
文化を守る、森林を守る、自然を守る、穏やかに生きる……
現代人が忘れかけているこれらのことが、押しつけがましくなく語られる。
もちろん、貧しいより豊かなほうがいい。しかし経済的に貧しければ豊かではないのか。
ともすれば陳腐な問いかけになるこのことを、本書は投げかける。
コンビニのある生活もいいが、ブータンで暮らすのも悪くないと思わせてくれた。
なお、ブータン関係の新書では「美しい国ブータン(リヨン社)」もお勧めだ。