「ニューヨーカー」誌は「ブロークバック・マウンテン」で「ナショナル・マガジン・アワード・フォー・フィクション」を受賞。「1998年プライズ・ストーリーズ―O・ヘンリー賞」にも選ばれた。プルーは、美しく心に響く文で、二人のカウボーイの困難で危険な関係が何物をも超えつつ、世界の暴力的な不寛容だけに阻まれるさまを描いていく。 --このテキストは、 ペーパーバック 版に関連付けられています。
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79 人中、78人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
心から離れません,
By T (京都市伏見区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: ブロークバック・マウンテン (集英社文庫(海外)) (文庫)
映画館を出た後、1週間ほどこの映画のことが頭から離れませんでした。その後原作も読みましたが、あれだけの薄っぺらい本の中で淡々と事実をただ語っているだけのような語り口でここまで人の心に取り付いて離れないアニー・プルーの小説に、言葉で表現できないそれこそ「心を持って行かれた」ような状態に陥ってしまいました。一体何なのでしょうか。この物語が読む人、観る人をここまで引き付けて話さない力というものは。。。人は皆誰もが心に「もし帰れるならあの時に...あの場所に...」と思う時間や場所を持っていると思います。この物語の主人公であるEnnisとJackにとってそれが二人が最初の夏を過ごしたブロークバックマウンテンであり、その場所でのその時の思い出は彼らのその後の決して幸せとは言えない人生の中の決して忘れることの出来ないかけがえのないものとなります。その後20年間彼らはその思いを貫くことになりますが、貫くと言うよりむしろ出来れば断ち切ってしまいたいのにそうすることが出来たら本当に楽になれるのに、それが出来ない。そしてそのまま彼らの思いは続いていきます。お互いに自分が本当に愛している人間が誰であるのか分かっていながら、二人で生きることを決意することが許されない社会の中で仮面をかぶって生き続けていくこと人生がどれほど辛いものか...Jackの方はそれでもEnnisと共に生きていくことを選ぼうとしますが、Ennisにはどうしてもその勇気を持つことが出来ません。そんなEnnisをJackは最後に「一度だけ言う」と言って責めるのですが、目の前で涙を見せながらJackの存在があるから今の自分はこんな腑抜けのようになってしまっているのだ、と訴えるEnnisをJackは抱き締めます。結局どうするこもできないことが彼らにはわかっているのです。この場面での原作の文章が私の心に強く打ちました。(私は英語で読みました。)「何も解決せず、始まることも終わることもない」まま彼らはそれぞれの人生へと帰っていきます。そしてその後に悲劇は起こります。 この映画を観終わった時、そして本を読み終えた時、改めて人は失って初めてその失ってしまったものの大切さを知るのだ、と思いました。そしてどれだけ深く嘆き悲しんでももうそのことを取り戻すことは出来ないのです。そしてそれでもなお人生は続いていきます。どれだけ辛くてもその思いを抱えながら人生は続いていくのです。そう思った時、今の自分が当たり前にとってしまっている自分を取り巻く環境や人を大切にしなければいけない、と思うと同時に、人は生きれば生きるほど、切なさというものを積み重ねていくのではないか、と恐れにも似たような感情が私の中に起こりました。 最後に...でもやはりこれほどまでに人を愛し、愛される機会に巡りあった主人公達を(フィクションだとはわかっていますが)幸せであったのではないか、と思うのです。
59 人中、58人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
プルーの声,
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レビュー対象商品: ブロークバック・マウンテン (集英社文庫(海外)) (文庫)
「ゲイのカウボーイの物語」と乱暴な要約で称される映画の原作として読むと、想像とのギャップに驚くだろう。米の60年代、ストーンウォール事件を通過し人権運動の時代を駆け抜けながらも、ゲイという言葉すら知りそうもない中西部を舞台に、甘い感傷やロマンティシズムとは一切無縁に語られるからだ。さらに、アカデミー作品賞大本命の呼び声も高い感動的映画(各映画賞総なめの評価や米で起こった論争を考えれば、もし受賞がなくても単に協会の保守性が露呈するだけだろう)の評判を聞き、映画が映し出す同性愛以上に普遍的なテーマ、つまり自分を偽り激しい自己否定の中で掴めたはずの真実さえ失ってしまった男の喪失感と深い悲しみを求めても、安易な癒しや許しは与えられない。プルーの言葉は驚くほど武骨かつ容赦なく現実の厳しさを突きつけるのだ。彼らには愛の言葉も与えられない。なぜならその愛はその場所では名前さえ持たなかったから(同性愛は「あえてその名を語らない愛」と呼ばれた、どんな異性愛がこれほどの自己否定を強いるだろう?異性愛者にその苦悩がわかるだろうか?)。とはいえ、彼らのせいいっぱいの愛情表現を見よ(セリフが本当に素晴らしいので、できれば原書で読んでほしい)。何の飾りもない直情的な言葉の生々しい痛み、圧倒的な背景として語られるワイオミングの荒々しい自然の中、ゴツゴツと語られる物語がこれほど胸を打つのはなぜだろう。すぐには消化できず何度も原書を読んだものだが、その度にすべての言葉がほとんど完璧に思えたものだった。限度があることも確かだが、日本語訳でもプルーの声をなるべく忠実に残そうという試みがされていることに感謝したい。映画の味わいも小説とは違うものだが、監督・脚本・キャスト・撮影・音楽のすべてにおいて想像しうる限り最良の映画化だと言えるだろう。何しろほんの数十ページが贅沢にも2時間以上の映画になったのだから。
31 人中、31人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
心に響く余韻は映画と同じ,
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レビュー対象商品: ブロークバック・マウンテン (集英社文庫(海外)) (文庫)
映画にあまりにも感動し、翌日に書店を捜し回って購入。30ページしかない短篇はあっと言う間に読み終えた。そこに描かれていたジャックとイニスの世界は、余計なものがすべて削ぎ落とされ、選びぬかれた言葉で紡がれていたせいか、映画よりストレートで荒削りな印象を受けた。主人公の二人も、映画で彼らを演じた俳優たちのような魅力的なハンサムとは書かれていないし。…しかし、一読した後にいつまでも残る切ない余韻、日を追うごとに押し寄せてくる不思議な感動は、映画を観て感じたものと全く一緒だった。 映画のDVDも、何度も何度も観て、台詞や俳優の表情を覚えてしまったものだが、この原作本も、カバンに入れて持ち歩き、好きな箇所は暗唱できるくらい繰り返し味わいながら読んでいる。 イニスとジャックの間に交わされる会話は、何の飾り気もない無骨そのものの言葉だけど、飾らない言葉だからこそ、よけい魂にずしりと響く。二人が四年後に再会し、情熱的に抱擁するシーンや、最後の逢瀬での、血を吐くような哀しい諍いのシーンは、映画でも特に心をわしづかみにされたけど、これらのシーンは、原作の文章もまた、すばらしいのである。 荒々しくて骨張っているけど、心に直にたたみかけてくるような表現の数々には圧倒される。そしてその反面、女性ならではの繊細な感性の光る表現が、宝石のようにほどよくちりばめられている。 一番好きなのは、あの有名なまどろみの抱擁のシーン。映画の映像もよかったが、台詞がないシーンなので、ここだけは、原作の方が美しさも切なさも際立っている。ジャックがこの静かな抱擁を、なぜいつまでも忘れることができなかったのか、原作にはこのうえなく美しい言葉で綴られているのだ。 とにかく名作。映画のお陰でこの短篇に出会えて幸せだ。
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